2010年3月11日木曜日

症例報告

 月に1回、症例報告会をやっている。昨日は16名で行った。初診日から既往歴について、どのような考えで、治療方針を立てていくか、また、検査、治療はどのような方向で進めていくべきか各自が発表していく。なかなかレベルが高くてびっくり。普段は、私がいると若手が気を使うということなので顔を出していない。今回、症例報告を出して、初めての参加となる。
 症例報告
初診日:平成21年11月20日
性別:男性 年齢73歳 職業:現在は無職 去年までは船関係
症状:めまい やる気が起こらない 気分がすぐれない いつも横になって寝ている
 妻より相談を受ける。 1か月前から夫が、めまいが起こっている感じで何もやる気が起こらなくていつも寝ている。心配で病院で検査したが異常なし。カイロプラクティックの治療で何とかならないかと相談を受ける。 (私:症状が改善するかどうか解らないが、できることはしましょうと受諾する)
事故歴:2ヵ月前に、助手席に乗って、車が引っくり返る。 病院で検査を受けるが異常なし。事後症状もなし。
既往歴:3年前に肺がんで手術を受ける。開胸手術ではなくて、右の肋骨の間からカメラを入れてがんを切除する。
治療方針
  問診して、眼の動き、体の動作、話し方を見ながら、禁忌症に含まれるめまいかどうか観察する。 病院でも、検査結果が異常なしということなので、アプローチする。まずは、脊柱・骨盤を土台として、リンパ、血液の流れ、神経の働き、そして肺呼吸を大きくすることで、エネルギーの流れが改善するのではないか。その結果、どのように症状が変化するかを見極めながら治療方針を決め ていくことにした。その旨を、患者さんと妻に説明する。
治療1回目
 水平膜のシステムの改善を目的に、検査と治療を行う。
検査:大きく呼吸してもらい胸郭上口と横隔膜、骨盤底の動きをみる:ほとんどなし。 肋骨のモーパル:左右とも動きが減少しているが、特に右上部の可動域が減。 肺の膨らみも、右上部の動きが減。 トータル・ボディ・バランスの姿勢検査・脊柱骨盤のモーパル・筋力検査を行った。ただし、今回の症例の取り組みをメインとしたいので、焦点がぼけるのを防ぐために、省略させてもらう。
治療:舌骨、胸郭上口、横隔膜、骨盤底の治療は、各部にコンタクトして(胸郭上口には手掌、横隔膜は  母指を肋骨弓に、骨盤底は両母指で)息を吸って吐かせて、その動きについていく。息を吐ききっ たら止めてもらう。タッピングが起こるまで待つ。また息を吸ってもらうが、それに抵抗する。これを3 回位繰り返す。高齢でもあるので6割程度回復する。
 肺については、向こうからくっついてもらう感を意識しながらコンタクトして、肺を包んでいる膜、胸郭の膜が解放されるのを待つ。コンタクトした手の中で熱くなり振動が起こる。それらがなくなり緊 張感がとれたので解放が起こったと反出して終わる。呼吸がしやすくなる。
治療2回目
 症状を聞くが、あまり変化がない。
 1回目と同じ検査と治療を行い、水平膜システムの完全度を上げる(8割位)
治療3回目
 めまいが楽になって歩けるが、頸を最大可動域まで右回転するとめまいがする
検査:迷路反射、緊張性頚反射、小脳などのバランスシステムをみる。異常なし。
筋力検査:右の胸鎖乳突筋、斜角筋が筋力低下。
モーパル:右の胸鎖関節に圧痛と可動域増(ハイパーモビリティ)
治療:胸鎖関節の圧着とテーピンングで固定。
治療4回目
 楽になったが頸を振ると少しめまいが残っている。
 検査と治療を、治療3回目と同じ目的で行う。
治療5日目
 頸を振っても大丈夫だが、枕に頭をつけるとめまいがする
 目的は、後頭骨と硬膜の関係(縦の膜システムの問題)、頸と筋膜に問題があるのではと考えて検査と治療を行う。
検査:後頭骨と蝶形骨の関節の動きが減(大孔の緊張+)。頸椎2番に,3番にフィクセ―ション+。後頭骨を触診時、重い、動いていない、何も流れていない感じがする。
治療:頸椎2判、2番に関しては、緊張の取れる位置で待つ。後頭骨と蝶形骨の関節に関してはEV4と   いうテクニックでアプローチする。小脳と後頭骨の間が狭くなって脳脊髄液の流れがとどこおっているのではと考えて、スペースが広がるように意識して待った。3分くらいして頭の重さが軽くなったの と活動してきたので終わる。
治療6回目
  玄関に入ってきたら大きな声で挨拶された。顔を見るとぼやけた顔だったのが別人のように輪郭がはっきりしていた。エネルギーがあふれている感じだった。めまい、だるさがなくなり、やる気が出てきたと話された。
検査と治療は、前回の確認を行いながら、全体が一つになって活動できるようにアプローチした(トータル・ボディ・バランス)。
治療7回目
 黒の革ジャンとブーツを履いてきた。気分が良いのでバイクで来院。患者に意識の変化と健康に対する自信が芽生えてきたので治療を修了とする。
検査と治療は、安定しているか確認しながら行った。
考察
 今回は、カイロプラクティックの治療範囲の症状なのかどうか解らないので、整理しながら進めて いった。毎回、テーマを決めて、今回はこれでどんな反応が起こるのかと思いながら行った。 カイロプラクィってくでは、治療効果に芽がいきがちだが、検査を大切にすることで効果が上がるこ とに注目してもらえればと思う。玉ねぎの川を一枚一枚むくような感じで、芯までたどり着くような治療を心掛けたい。